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癌細胞の特徴 Vol.006 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞の特徴 Vol.006

 ◆ ブドウ糖は癌細胞の生命線

 嫌気性解糖系が亢進している癌細胞は、正常細胞と比較して数倍から数十倍のエネルギー産生と物質合成が行われています。これは、癌細胞が数を増やしていくには、莫大なエネルギー(ATP)と細胞構成成分(蛋白質や脂質や核酸)が必要だからです。

 そして細胞は、解糖系やペントース・リン酸経路などと言った細胞内代謝系によって、ブドウ糖から細胞構成成分を作ることができるため、癌細胞では、正常細胞よりもブドウ糖の取り込みが増えているのです。

 また、癌細胞はミトコンドリアでの酸化的リン酸化を低下させる事で細胞死を起こしにくくしている事が知られています。

 細胞分裂しない神経や筋肉細胞を除いて、正常な細胞は、古くなったり傷ついたりするとアポトーシスというメカニズムで死にます。人間の細胞は、毎日3000億個以上(約200g)の細胞がアポトーシスで死に、新しい細胞が増殖して入れ代わっています。

 このアポトーシスが起きる際には、ミトコンドリア電子伝達系や、酸化的リン酸化に関与する物質(チトクロームCなど)が重要な役割を果たすのですが、癌細胞では、アポトーシスを起こりにくくする為に、あえて、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化を抑え、必要なエネルギーを細胞質における解糖系に依存していると解釈できるのです。

 実際、「ジクロロ酢酸ナトリウム」という薬を用いて、癌細胞のミトコンドリアにおけるTCA回路を活性化させると癌細胞にアポトーシス(細胞死)を引き起こすことができる事が報告されています。

 この為、ジクロロ酢酸ナトリウムは癌の代替医療として臨床でも使用され、有効性が報告されています。

 また、嫌気性解糖系でのブドウ糖の代謝によって乳酸増えると、癌組織が酸性になり、癌細胞の浸潤や転移が好都合になります。

 何故なら、癌組織が酸性化すると正常な細胞が弱り、結合組織を分解する酵素の活性が高まる為、癌細胞が周囲に広がりやすくなるのです。

 さらに、乳酸には、癌細胞を攻撃する「細胞傷害性T細胞」の増殖や「サイトカイン」の産生を抑制する作用や、癌に対する免疫応答を低下させる作用があります。

 加えて、嫌気性解糖系でエネルギーを産生するということは、血管が乏しい酸素の少ない環境でも増殖が可能になるということです。また、すでに述べた通り、酸素を使わないことで「酸化ストレス」を軽減できるという点も、癌細胞にとってメリットになります。

 以上のような複数の理由から、癌細胞では「嫌気性解糖系」および「ブドウ糖の取り込み」が亢進しているのです。

 そして、この「ブドウ糖の取り込み」亢進こそが癌細胞の生存や増殖や転移を支えている。と言っても過言ではありません。


 即ち、この事は、科学的・医学的にも解明されている、世界の「癌の常識」なのです。

 癌患者であるならば、ここでお話している「癌とブドウ糖の関係」を熟知し、日々の食事の「ブドウ糖」の摂取に対して最大限の注意を払わなければなりません。癌患者が糖質ブドウ糖)を無制限に摂取すれば癌を不要に育てて進行させる羽目になることを「ゆめゆめ」忘れないで下さい。

 最後に、当記事を何度も読み込んで「癌とブドウ糖の関係」について理解を深められ、癌患者が糖質ブドウ糖)を制限する療法(糖質制限療法:ケトン食療法)の良さを悟るのにお役に立てば幸いです。











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癌細胞の特徴 Vol.005 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞の特徴 Vol.005

 ◆ 癌細胞におけるワールブルグ効果の重要性

 癌細胞で嫌気性解糖系が亢進している(酸素を使わずにエネルギーを産生する)事を「ワールブルグ効果」と言いますが、この効果が起こる理由として、ワールブルグ博士自身は「癌細胞では、ミトコンドリアでのエネルギー産生に何らかの異常があるため、ATP産生の不足をきたし、その代償作用として嫌気性解糖系の活性が高くなっている」と考えていました。

 しかし、その後の研究で多くの癌細胞においてミトコンドリアの機能自体は正常である事が明らかになりました。

 その為、何故、癌細胞ではミトコンドリアでの酸化的リン酸化が低下して、酸素が存在する状況でも嫌気性解糖系が亢進するのかと言う事が長い間謎のままになっていたのです。

 癌細胞は増殖が早く、血管の新生が追いつかないので酸素不足になりがちです。よって、ワールブルグ効果が起きるのは「癌細胞が、低酸素状況に適応する為の単なる結果に過ぎない」という意見が、昔は、主流でした。

 しかし、最近の研究では、ワールブルグ効果が、細胞の癌化において「重要かつ必要なもの」という考えが主流になってきています。

 具体的に言うと、

 ・癌細胞が増殖する為に必要な核酸・脂肪酸・アミノ酸の合成量
  を増やせる
 ・血管が乏しい低酸素状態でも増殖できる
 ・ミトコンドリアでの酸化的リン酸化を抑制すると、
  細胞死(アポトーシス)が起こりにくくなる
 ・乳酸が免疫細胞の働きを抑制する
 ・癌組織の周辺を酸性化することで癌細胞が浸潤しやすくなる

など、ワールブルグ効果が、癌細胞の生存と増殖の為に好条件をもたらしていることが明らかになってきているのです。(図11)

fig11

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癌細胞の特徴 Vol.004 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞の特徴 Vol.004

 ◆ 癌細胞が酸素を嫌う理由

 まだ酸素が存在しない太古の地球に生きていた生物は、嫌気性解糖系を行っていました。

 しかし、海中に緑藻類が発生し、光合成によって大気中に酸素を吐き出し始めると、嫌気的な環境で生きていた生物は、酸化力の強い酸素に触れてダメージを受けるようになりました。

 さらにその後、空気中に酸素が溜まり始めた時期には、嫌気性解糖系を行っていた原始真核生物の多くが絶滅していった。嫌気的な生き物にとって酸素は毒になったのです。

 この様な状況で誕生したのが、酸素を使ってATPを生成する好気性細菌でした。

 前にも述べた通り、真核細胞のミトコンドリアは、好気性細菌のα-プロテオバクテリアが、原始真核細胞に寄生したものだという「細胞内共生説」が定説になっています。

 好気性細菌は、生体にダメージを与える酸素をブドウ糖に結合させ、二酸化炭素と水に分解し、更には、その過程でATPを大量に生成することができます。このため、酸素による悪影響に苦しんでいた原始真核生物にとって、好気性細菌との共生は好都合だったのです。

 この細胞内共生によって、酸素が豊富な環境下での生物の進化が促進される事となりました。酸素による燃焼反応を利用すれば、莫大なエネルギーを得ることができるからです。

 細胞の中で酸素を消費するのは、ミトコンドリア電子伝達系ですが電子伝達系で酸素を使い、ATPが産生される過程では、多量の「活性酸素」が発生します。この活性酸素というのは、酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称です。

 酸化というのは、物質に酸素が化合する反応で、この際、酸化される物質は酸素から電子を奪われます。通常、酸素は相手から2つの電子を奪いますが、稀に1個しか取り込めない場合があり、その際に発生するのが活性酸素なのです。

 活性酸素は電子が1個足りないため、他の物質から電子を奪う(酸化する)作用が強く、酸素以上に強い酸化力を持ちます。

 そして、活性酸素によって遺伝子(DNA)が傷つけられれば、突然変異を起こして「癌の原因」になることがあり、また、蛋白質や細胞膜が酸化されれば細胞の老化が進みます。

 呼吸で体内に取り込まれた酸素の約2~3%は、電子伝達系でのエネルギー代謝時に還元され、「スーパーオキシドアニオン」「過酸化水素」「ヒドロキシルラジカル」あるいは「一重項酸素」などの活性酸素に変わると言われています。

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上図は「活性酸素の種類」です

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活性酸素は、体内で「上図の順番」で発生しています



 また、細胞内における活性酸素の主要な発生源はミトコンドリアなのですがミトコンドリアから発生した活性酸素は、ビタミンEやビタミンCなどの抗酸化物質、および、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)やカタラーゼといった抗酸化酵素によって消去されます。

 つまり、正常細胞には、活性酸素で障害を起こさないようにするための防御機構が備わっているのです。

 ところが、癌細胞では、これらの抗酸化力(抗酸化物質や抗酸化酵素の量)が低下しています。これは、元々癌細胞が酸素を使わない代謝系でエネルギーを産生し、ミトコンドリアの酸化的リン酸化の活性が低下しているためです。

 よって、癌細胞は、活性酸素のダメージによって細胞死や細胞傷害を起こさないために、ミトコンドリアの活性、すなわち酸化的リン酸化をさらに抑制する必要があります。このようにして、癌細胞は、ますます酸素を使わないようになるのです。

 これはつまり、癌細胞は酸素を使わない生き方を選ぶ方が生存に有利になるということであり、ワールブルグ博士の言葉で表現すれば、

 「癌とは嫌気的な生き物

なのです。

 そして、逆に言えば、

 「癌細胞は酸素を使った代謝が増えれば死滅する

という弱点を持っていると言う事になります。

 このように、癌細胞は酸素を使わない代謝(嫌気性解糖系)に頼っている為、ブドウ糖の取り込みが増え、ブドウ糖への依存度が非常に高くなっています。

 「癌細胞はブドウ糖中毒に陥っている

と言っても過言ではありません。

 「ミトコンドリア老化説」という仮説があります。

 これは、老化やそれに伴う多くの病気が、細胞呼吸の際にミトコンドリアから漏れ出す活性酸素によって引き起こされるという考え方に基づくもので、例えば、運動(酸素を消費する行為)等を積極的に行うことは老化を促進するというものです。

 また、体重あたりの酸素消費量が少ない動物ほど、長生きするというデータもあります。

 つまり、ゾウやカバやウマがネズミやリスより寿命が長いのは、体重当たりの酸素消費量が少ない為であり、逆に、酸素消費が多ければ活性酸素が多く発生して老化が早く進むと言う事です。

 この説にのっとれば、癌細胞は、できるだけ酸素を使わない方が寿命を延ばせると言う事が分かっているようにも思えます。











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癌細胞の特徴 Vol.003 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞の特徴 Vol.003

 ◆ HIF-1の役割

 細胞が酸素不足に陥った際に、誘導されてくる転写因子であるHIF-1は、αβの2つのサブユニットからなるヘテロ二量体です。

 このうち、βサブユニットは定常的に発現していますがHIF-1αは、酸素が十分に存在するときにはユビキチン化して、26Sプロテアソームで分解され、活性がなくなります。

 逆に、低酸素になるとHIF-1αは安定化し、核に移行して遺伝子の低酸素反応エレメント(hypoxia response element)に結合し遺伝子の発現を誘導します。

 HIF-1は、各種解糖系酵素、グルコース輸送蛋白、血管内皮増殖因子、造血因子エリスロポエチン等、多くの遺伝子の発現を転写レベルで促進し、細胞から組織・個体に至るすべてのレベルの低酸素適応反応を高める働きをしていますが、一方で、TCA回路につながるピルビン酸脱水素酵素(ピルビン酸から、「アセチル CoA」を生成する酵素)を抑制して、酸化的リン酸化を積極的に抑える作用もあります。

 更にHIF-1は、癌細胞の増殖や転移・浸潤や悪性化進展において鍵になる100以上の遺伝子の発現を調節しており、この中には、血管新生、エネルギー代謝、細胞増殖、浸潤、転移、などに関与する多くの遺伝子が含まれています。

 腫瘍血管の新生は、低酸素で誘導されますが、血管新生に関わる40以上の遺伝子の発現を誘導するHIF-1は、血管新生促進因子の産生スイッチを入れるマスタースイッチとも言えます。

 その為、HIF-1の働きを阻害すれば、血管新生を阻害して癌細胞の増殖を抑えることができるのです。

 また、HIF-1は低酸素状態のときだけでなく、癌細胞の増殖シグナル伝達系であるPI3K/Akt/mTORシグナル伝達系を介しても活性化されます。

 従って、癌細胞では低酸素状態でなくてもHIF-1活性が常時亢進しており、酸素があっても嫌気性解糖系のスイッチが切れないのです。











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癌細胞の特徴 Vol.002 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞の特徴 Vol.002

 ◆ 癌細胞は酸素があっても酸素を使わない

 一方、癌細胞では嫌気性解糖系が亢進しているので、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化は抑制されているのが特徴です。これは、つまり、酸素が十分にあってもミトコンドリアでの酸素を使ったエネルギー産生を行わないということです。

 このように、癌細胞は酸素があっても酸素を使った好気性呼吸を行わない事が酵母や正常細胞と異なる点(表1)であり、この為ブドウ糖の取り込みが正常細胞の何十倍も高くなっています。

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 酸素があっても嫌気性解糖系が抑制されない理由の1つとして、「低酸素誘導因子-1(HIF-1)」という転写因子が、恒常的に異常に活性化していることが挙げられます。

 転写因子と言うのは、特定の遺伝子の発現(DNAの情報を蛋白質に変換すること)を調節している蛋白質のことで、HIF-1は、解糖系酵素の遺伝子転写を促進して解糖系を亢進し、TCA回路に行く経路を抑制する作用があります。

 正常細胞では、低酸素状態になるとこのHIF-1が活性化されて、嫌気性解糖系が進行するのですが、酸素があるときには、HIF-1が不活性化され、嫌気性解糖系が抑制される仕組みになっています。

 つまり、正常細胞では、HIF-1によって、好気呼吸嫌気呼吸スイッチ切り替えが起こる一方、癌細胞では、HIF-1の上流のシグナル伝達系(PI3K/Akt/mTOR経路と言う)が活性化されているので、低酸素状態でなくてもHIF-1が活性化しています。

 このため、癌細胞では酸素が十分にあっても低酸素状態のスイッチが切れず、嫌気性の代謝が続くことになるのです。











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癌細胞の特徴 Vol.001 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞の特徴 Vol.001

 ◆ 正常細胞は酸素があれば、酸素を使ってエネルギーを生成する

 酸素を使ってATPを産生する代謝系を「好気呼吸」と言い、逆に、酸素を使わずにATPを産生する代謝系を「嫌気呼吸」と言います。

 アルコール発酵や乳酸発酵など、発酵過程の代謝は嫌気呼吸になりますが、この嫌気呼吸(発酵)は、好気呼吸に比べてATPの産生効率が極めて悪く、その産生量には格段の差があります。

 そのため、動物の細胞は、基本的には酸素を使い、ミトコンドリアブドウ糖脂肪酸を水と二酸化炭素に完全に分解(酸化)することで、効率良くエネルギーのATPを生成しています。

 しかし、酸素の供給が間に合わないときは、嫌気性解糖系でATPを作らざるを得ません。

 例えば、全力で100メートルを走るときのように、筋肉が短時間で大量のエネルギーを必要とするときは、筋肉細胞は、嫌気的なブドウ糖の分解によってATPを作り、このとき乳酸が大量に作られます。この反応は、乳酸菌の乳酸発酵と全く同じです。

 一方、酸素の供給が十分にある有酸素運動を行う際などは、筋肉細胞は、酸素を使ってミトコンドリアブドウ糖を酸化して、ATPを産生します。

 このように、通常の細胞では、酸素があればTCA回路酸化的リン酸化ATPを産生するようになっているのです。











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細胞とエネルギー Vol.008 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.008

 ◆ 嫌気性解糖系は発酵と同じ

 一方、動物細胞の場合、酸素の供給が十分でなければ細胞質において乳酸脱水素酵素の作用でピルビン酸乳酸に変換されます。

 この生化学反応は「嫌気性解糖系(anaerobic glycolysis)」と呼ばれ、細胞が無酸素状態でブドウ糖からATPを作る反応のことです。

 そしてこれは、乳酸菌が糖質を発酵させて乳酸を作るときの化学反応(乳酸発酵)と全く同じです。

 つまり、運動をして筋肉細胞に乳酸が溜まるのは、酸素の供給が不足して嫌気性解糖が進むからなのです。

 酸素が十分にある状態では、ミトコンドリア内で効率的なエネルギー産生が行われる為、1分子のブドウ糖からは32分子のATP(※)が作られます。

(※)酸化的リン酸化で生成するATPの量は、1分子のブドウ糖あたり30~38分子
   など、複数の説があり確定していませんが、ここでは米国の生物学の教科書である
   『Life:the Science of Biology』の記述に準拠して、32分子にしています。

 ところが、嫌気性解糖系に行った場合は、1分子のブドウ糖からは、2分子のATPしか作られません。

 動物細胞は、ブドウ糖ピルビン酸まで分解した後、酸素があれば、TCA回路電子伝達系による酸化的リン酸化によって、ATPを生成しますが、酸素がない場合は、ピルビン酸から更にアルコール酵母)や 乳酸(筋肉や乳酸菌)に分解します。

 このように、無酸素状態のとき、ピルビン酸で止まらずに乳酸やエタノールに変換される理由は、

 ・解糖系で還元された NADH
  (還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)を
 ・酸化型の NAD+ に、

戻すためです。

 詳しく言うと、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、酸化還元反応における電子伝達体として機能しており、酸化型(NAD+)と還元型(NADH+H+)の2種類の形で存在しますが、NAD+は、解糖系の反応に必要で、NAD+が枯渇すると解糖系が進行しなくなるため、解糖系で還元型になった NADH+H+ を NAD+ に戻す目的で、乳酸(乳酸発酵)やエタノール(アルコール発酵)が作られるのです。(図10)

fig10


 この様に、細胞は発酵を通じて NAD+ を補充することにより、更に、多くのブドウ糖を解糖系で代謝できるようになります。

 なお、乳酸は、血液で肝臓に運ばれ、乳酸脱水素酵素によって、ピルビン酸に変換され、ブドウ糖に再生されます。

 この過程を「糖新生」と言います。

 この糖新生で再生されたブドウ糖は、血中に放出されて、筋肉でエネルギー源として再利用されます。











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細胞とエネルギー Vol.007 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.007

 ◆ 酸素がなければ、酵母は発酵でATPを産生する

 日本酒やビールワイン等と言ったアルコールを醸造するためには、酵母が必要です。

 酵母は、酸素がない条件では糖を分解してエタノールと二酸化炭素を作る「アルコール発酵」という代謝系でエネルギーを産生しています。

 発酵というのは、酵母乳酸菌などが、酸素のない嫌気的条件でエネルギー(ATP)を産生するための反応系であって、ブドウ糖ショ糖等の有機化合物を酸化してアルコールや有機酸(乳酸等)、あるいは、二酸化炭素等を生成します。

 ちなみに、アルコール発酵では、1分子のブドウ糖(C6H12O6) から2分子のエタノール(C2H5OH)と、2分子の二酸化炭素(CO2) が生成されます。

 私たちは、アルコール飲料や様々な発酵食品(納豆、味噌ヨーグルトチーズ、キムチ、漬け物など)を飲んだり食べたりしていますが、これらは酵母乳酸菌が酸素のない条件下で生きていく為におこなっている発酵の副産物に過ぎません。

 実際、酵母に酸素を与えると、発酵を行わない為アルコールは生まれません。酸素がある好気的な条件で酵母ブドウ糖を与えると、水と二酸化炭素に分解してしまうのです。

 何故なら、その方が多くのATPを産生することができ、増殖に有利になるからです。











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細胞とエネルギー Vol.006 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.006

 ◆ 酸素があると、
   ピルビン酸がミトコンドリアに入ってATPが生成される


 酸素の供給がある状態では、ピルビン酸は、ミトコンドリア内に取り込まれ、ピルビン酸脱水素酵素複合体の作用で、

 ・二酸化炭素(CO2)が除去されてアセチル基になり、
 ・このアセチル基にコエンザイムA(CoA)が結合して、
 ・アセチルCoA に変換され、
 ・トリカルボン酸回路(tricarboxylic acid cycle
  (TCA回路/クエン酸回路/クレブス回路)と、
 ・電子伝達系によって更にATPの産生が行われます。(図9)

fig09


 CoA は「補酵素A」とも呼ばれる。生物にとって極めて重要な補酵素であり、様々な化合物を結合することによって、糖質脂質アミノ酸などの代謝反応に関わります。

 また、TCA回路は好気性代謝という酸素を使う代謝の中で最も重要な反応で、ミトコンドリアマトリックス(内膜に囲まれた内側)で行われます。

 このTCA回路では、ブドウ糖からの分解産物であるアセチルCoA が段階的に代謝され、エネルギーのもとになる電子(NADH と FADH2)が発生します。

 TCA回路では、ATPは、1分子も生成されませんが、ここで生成された

 ・ NADH (還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)や
 ・ FADH2(還元型フラビンアデニンジヌクレオチド)が、

ミトコンドリア内膜に埋め込まれた酵素複合体に電子を渡し、この電子は最終的に酸素に渡され、まわりにある水素イオンと結合して水を生成します。

 この様にして、TCA回路で産生された NADH や FADH2の持っている高エネルギー電子をATPに変換する一連の過程を「酸化的リン酸化」と呼び、ミトコンドリア内膜の蛋白質や補酵素間で電子のやり取りを行うシステムを「電子伝達系」と呼ぶのです。

 酸素が存在する状況下に於いては、電子伝達体(NADH と FADH2)の再酸化によって大量のATPが合成され、こうして作られたATPは、ミトコンドリアから細胞質へ出て行き、そこで細胞の活動に使われる。











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細胞とエネルギー Vol.005 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.005

 ◆ ブドウ糖がピルビン酸になる反応「解糖」

 ヒトの血液100ml中には、およそ、80~100mg のブドウ糖が存在します。

 ブドウ糖は、血液中から細胞に取り込まれ、

 ① 解糖(glycolysis)
 ② TCA回路(クエン酸回路、又は、クレブス回路とも呼ぶ)
 ③「電子伝達系」における「酸化的リン酸化」を経て、
   二酸化炭素と水に分解され、
 ④ エネルギー(ATP)が取り出されます。(図7)

 このうち①項の「解糖」では、酸素を使わずにブドウ糖に保存されているエネルギーの中から、少量が使用可能なATPとして取り出され、TCA回路と酸化的リン酸化は、「ミトコンドリア」内で酸素を使って行われます。

 更に詳しく言うと「解糖」とは、

 ・炭素数6個のグルコース(ブドウ糖:C6H12O6)1分子が、
 ・数段階の酵素反応を経て、
  炭素数3個の「ピルビン酸(C3H4O3)」2分子に、
 ・分解される過程のことであり、

2分子のATPが生成されます。(図8)

fig07_8


 なお、「解糖」の経路は、1920~30年代にドイツの生化学者

 ・エムデン(Gustav Embden:1874-1933)と
 ・マイヤーホフ(Otto Meyerhof:1884-1951)を

中心として解明されました。

 その為、この2人の名前を取って「エムデン・マイヤーホフ経路」とも呼ばれます。











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細胞とエネルギー Vol.004 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.004

 脂肪や蛋白質もエネルギー源となる

 車はガス欠になればただちに動かなくなりますが、実は、ヒトは糖質の補給がない場合でも、水さえ摂取できれば1~2ヶ月程度は生存できます。これは、脂肪蛋白質を燃やしてエネルギーを作ることができるためです。

 食事と呼吸と体内でのエネルギー産生のあらましを「図6」に示しておきます。

fig06


 私たちが食事によってエネルギー源として体内に取り入れる栄養素糖質脂肪蛋白質で、これらを「三大栄養素」と言います。

 これらの栄養素は呼吸で取り入れた酸素を使い、ゆっくりと燃焼してエネルギーを作り出します。

 このエネルギーは、体の運動や細胞の活動や体温維持など生命維持の為に消費されますが、摂取エネルギーが消費エネルギーより多いとき、余ったエネルギーは主に脂肪となって貯蔵されます。

 酸素によって最もよく燃焼し、ATP生成に用いられるのは、主に、グリコーゲン澱粉など、糖質が分解してできるブドウ糖です。

 一方、脂肪はおもに予備エネルギー源として体内に貯蔵されますが、ブドウ糖が枯渇した際には脂肪が燃焼してエネルギーを産生します。

 そして、蛋白質は主に体の細胞を作るのに利用されますが、ブドウ糖脂肪も枯渇すれば、蛋白質が分解してできるアミノ酸が燃焼される様になります。

 このように、脂肪蛋白質ATPを作り出す燃料となり得ますが、その為には、ブドウ糖かブドウ糖代謝経路の中間体(アセチルCoA 等)に変換される必要があります。











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細胞とエネルギー Vol.003 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.003

 ◆ 細胞はブドウ糖を燃焼してエネルギーを産生する

 自動車が走る為にガソリンを燃やしてエネルギーを生むのと同様に、人間は、動く為にブドウ糖を燃やしてエネルギーを作ります。

 ただ、当然ながらブドウ糖はガソリンのように炎を出して燃える訳ではなく、細胞内でゆっくりと化学的に燃えます。

 燃料とは、保存されているエネルギーを利用できる形で放出することができる分子のことを指し、自動車の燃料はガソリン、細胞の主な燃料はブドウ糖です。

 すでに述べたように、植物は光合成によって糖質を作り出しますが、動物は自分で糖質を作り出せません。よって、私たちが生きていく為には、植物が光合成を通じて作り出した糖質を細胞に取り込み、細胞内で糖質を燃焼(分解)させることによって、ATPという活動エネルギーを生成する必要があるのです。

 ブドウ糖は、食事中の糖質が小腸で消化酵素によって分解されてできる「単糖(糖類の最小単位)」です。

 尚、穀物に含まれる澱粉はブドウ糖が多数結合したものであり、又、砂糖はブドウ糖果糖が結合した「二糖類」です。

 これらの糖質は、いずれも消化管で消化酵素によって単糖(ブドウ糖や果糖)に分解され、体内に吸収されます。

 消化管から吸収されたブドウ糖は、門脈血(胃や腸などの消化器系と脾臓から肝臓に流入する静脈血)から、まずは、肝臓に運ばれて肝細胞に取り込まれて、一部は肝静脈を経て全身(脳や骨格筋など)へと供給されます。











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細胞とエネルギー Vol.002 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.002

 ◆ 酸素を使ってATPを産生するミトコンドリア

 生命活動に利用されるエネルギーの源は、太陽からの光エネルギーに由来します。しかし、生物は、太陽の光エネルギーを直接ATPに変換できません。

 最初に光エネルギーを化学エネルギーに変換するのは、植物の細胞に存在する「葉緑体」という細胞小器官で、ここで光エネルギーを使い、水(H2O) と二酸化炭素(CO2) から、ブドウ糖(C6H12O6) と酸素(O2)を作り出します。

 これを「光合成」と言い、光合成によって、光エネルギーがブドウ糖の中に化学エネルギーとして保存されたことになります。

 そして、私たち動物は植物を摂取し、植物が光合成で作ったブドウ糖を細胞内で燃焼(分解)することによってATPを生成し、体を動かすエネルギーとして利用できるようにします。(図4)

fig04


 ヒトの細胞内には、生命活動に必要な様々な機能を効率的に働かせるため、核やリボソームなどといった機能の異なる様々な細胞内小器官が存在します。(図5)

fig05


 具体的な機能の一例を挙げると、核は、遺伝子(DNA)を格納し、リボソームや小胞体は蛋白質を合成し、ゴルジ体は分泌蛋白質や細胞外蛋白質に糖鎖をつける働きをします。

 そして、酸素を使って糖質脂肪酸を燃焼(酸化)させ、エネルギー(ATP)を生成する役割を持つのが、ミトコンドリアです。

 赤血球以外のすべての細胞には、細胞1個あたり平均して約300~400個のミトコンドリアが存在します。

 また、肝臓腎臓筋肉や脳など、代謝が活発な細胞には、数千個のミトコンドリアが存在し、細胞質の40%程度を占めています。

 体全体では、ミトコンドリアが1京(1兆の1万倍)個以上もあり、全部で体重の約10%を占めると言われています。

 ミトコンドリアは、約20億年程前に好気性細菌のα-プロテオバクテリアが原始真核細胞に寄生したものだという「細胞内共生説」が定説になっています。

 これはつまり、ミトコンドリアは、かつて細菌だったということで、実際、見かけも細菌に似ており、長さは1~4ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)程度で、いも虫型の立体構造をしています。

 又、ミトコンドリアは、2枚の膜(内膜と外膜)によって細胞質から隔てられ、内膜は複雑に入り組み、「クリステ」という無数の襞ひだや管を形成しています。

 このように、内膜が襞状にくびれているのは表面積を増やすためで、この内膜でATPの産生が行われているのです。











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細胞とエネルギー Vol.001 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 細胞とエネルギー Vol.001

 ◆ 「細胞のエネルギー通貨」の異名を持つATP

 前章で述べた通り、癌細胞の代謝の最大の特徴は、

ブドウ糖(グルコース)の消費量が正常細胞に比べて極めて高い

酸素がある条件でも酸素を使わない方法でエネルギーを産生する

ことでした。

 その理由を理解するためには、細胞のエネルギー産生の方法を知っておく必要があります。

 生化学の教科書に載っている様な専門的な内容になりますが、癌細胞の弱点を理解し、癌対策の食事療法を効果的に実践するのに役立つ知識ですので、ここで説明しておきます。

 すべての真核生物は、細胞が活動するエネルギーとして「アデノシン三リン酸(ATP)」という「ヌクレオチド」を利用しています。

 ATPは、アデノシンに化学エネルギー物質のリン酸が3個結合したもので、生物が必要とする活動エネルギーを保存した、「エネルギーの通貨」とも呼べる分子です。実際に、エネルギーを要する生物体の反応過程には、必ずATPが使用されています。

 このATPがエネルギーとして使用されると、

● 「ADP(Adenosine Diphosphate:アデノシン二リン酸)」と、

● 「AMP(Adenosine Monophosphate:アデノシン一リン酸)」

が増えます。

 すなわち、

 ATPADP+リン酸 ⇒ AMP+二リン酸

と言う様に分解され、リン酸を放出する過程でエネルギーが産生されるのです。(図3)

fig03


 細胞は、ブドウ糖脂肪酸に保存されているエネルギーをATP分子に捕獲し、筋肉の収縮や能動輸送や物質合成などといった細胞の仕事に使っているのです。











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癌細胞とは何か Vol.005 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞とは何か Vol.005

 ◆ 癌細胞はブドウ糖を多く取り込む

 癌細胞が「ブドウ糖」を多く取り込むことはよく知られています。

 癌細胞が数を増やしていくには、莫大なエネルギー(ATP)の産生と細胞を構成する成分(核酸や細胞膜など)の合成が必要ですが、エネルギー産生と細胞構成成分の合成のおもな材料がブドウ糖なのです。

 実際、多くの癌細胞の表面(細胞膜)には、細胞内へのブドウ糖の取り込みを行う「ブドウ糖輸送体(GlucoseTransporter)」という蛋白質の量が増えています。

 癌の検査法で「PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影)」というものがありますが、これは、フッ素の同位体で標識したブドウ糖(18F-フルオロデオキシグルコース)を注射し、この薬剤が癌組織に集まるところを画像化することで、癌の有無や位置を調べるというものです。

 つまり、PETは正常細胞に比べてブドウ糖の取り込みが非常に高い癌細胞の特性を利用した検査法という訳です。

 そして、癌細胞がブドウ糖を多く取り込むことが最初に報告されたのは1921年のことでした。

 糖尿病の患者が癌を発症すると尿糖が減ることや、ブドウ糖の入った培養液に癌組織や正常組織を入れて培養する実験で、正常の筋肉組織や肝臓組織に比べて、癌組織ではブドウ糖の消費量が極めて高い事が報告されました。

 また、翌年の1922年には、癌組織には乳酸が大量に蓄積している事が報告されており、これは、癌細胞では「嫌気性解糖系」が亢進しているということを意味します。嫌気性解糖系は、乳酸菌ブドウ糖から乳酸を作り出す「乳酸発酵」と同じ反応です。

 そして、1923年から、ドイツの「オットー・ワールブルグ」博士(Otto Warburg:1883~1970)のグループが、「癌組織では、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化が低下し、酸素がある状態でも嫌気性解糖系でのエネルギー産生が主体である」という現象について、一連の論文を発表しています。

 ミトコンドリアとは、赤血球以外のすべての細胞にある細胞内小器官であって、酸素を使ってATP(Adenosine Triphosphate:アデノシン三リン酸)を大量に生成する「細胞内のエネルギー産生装置」のようなものです。

 しかし、「癌細胞ではミトコンドリア内での酸素を使ったエネルギー産生が低下し、細胞質内で酸素を使わない嫌気性解糖系でエネルギーを産生している」という現象を、ワールブルグ博士が見つけたのです。

 このオットー・ワールブルグ博士は、「呼吸酵素(チトクローム)」の発見にて、1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞したドイツの生化学者です。細胞生物学や生化学の領域で重大な基礎的発見を次々に成し遂げ、呼吸酵素以外の研究でも何度もノーベル賞候補になった偉大な科学者です。

 そんなワールブルグ博士が最も力を注いだのが、癌細胞のエネルギー代謝の研究であり、癌細胞の異常な増殖を解明する為には、エネルギー生成の反応系を研究しなければならないという事から、呼吸酵素を発見したのです。

 そして、ワールブルグ博士のグループは、

●「癌細胞ではブドウ糖から大量の乳酸を作っていること
●「癌細胞は酸素がない状態でもエネルギーを産生できること

 さらに前述の通り、

●「癌細胞は酸素が十分に存在する状態でも、
  酸素を使わない方法(嫌気性解糖系)でエネルギーを、
  産生していること


を見つけていたのです。

 現在では、この現象は、「ワールブルグ効果(Warburg effect)」と呼ばれ、癌研究の重要なテーマの1つになっており、ワールブルグ効果を利用した癌治療法に注目が集まっているのです。











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癌細胞とは何か Vol.004 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞とは何か Vol.004

 ◆ 癌細胞の燃料を枯渇させる治療

 前述の通り、癌は、様々な遺伝子変異の蓄積によって発生しますが、「癌遺伝子」や「癌抑制遺伝子」等、細胞の癌化に関連している遺伝子の数は、軽く100を超えています。

 又、細胞の増殖や死を調節するシグナル伝達系は極めて複雑なネットワークを形成している為、細胞の増殖や死を制御するルートは何十種類もあります。

 遺伝子変異の種類や、異常を起こしているシグナル伝達系は、個々の癌組織によって異なり、又、同じ癌組織であっても、遺伝子変異の種類が違う癌細胞が混在しています。

 即ち、癌組織というのは、極めて不均一な癌細胞の集団なのです。

 この様に、癌細胞は、多様な遺伝子異常を持つ為、遺伝子変異を修復する遺伝子治療やシグナル伝達系の1つの分子を標的にした分子標的薬の効果に限界があることは明らかなのです。

 しかし、いずれの癌細胞にしても、増殖する為にはエネルギーを作る燃料と細胞を作る材料は必要です。

 よって、この燃料と材料の獲得を阻止すれば、その癌細胞がどの様な遺伝子異常を持っていようとも、増殖を阻止して死滅させることが可能になるのです。

 近年、癌細胞における代謝異常(エネルギー産生や物質合成の亢進)が癌治療のターゲットとして注目されるようになって来ています。

 アクセルとブレーキが故障して猛スピードで暴走している車を止める方法として、爆弾などで車そのものを壊して止めようという発想は、癌治療でいうと「抗がん剤」や「放射線治療」のようなものです。

 これに対して、燃料タンクからガソリンを抜き取って暴走車を止めるという方法があります。それが、癌細胞の燃料であるブドウ糖を枯渇させて、癌細胞を兵糧攻めにするという方法なのです。

 また、燃料を完全に枯渇できなくても、エンジンを動かしている電気系統を調整してエンジンを止める方法もあります。

 例えば「低酸素誘導因子-1(Hypoxia Inducible Factor -1:HIF-1)」という転写因子など、癌細胞の代謝亢進を引き起こしている因子を阻害すればエネルギー産生の指令系統を遮断する効果が得られるのです。

 尚、転写因子というのは特定の遺伝子の発現(DNAの情報を蛋白質に変換すること)を調節している蛋白質で、HIF-1は癌細胞の代謝亢進に必要な多くの遺伝子の発現を活性化する転写因子です。

 ※ HIF-1については、後ほど詳しくお話します。











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癌細胞とは何か Vol.003 [癌を知る]


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● 癌細胞とは何か Vol.003

 ◆ 癌細胞は代謝が亢進している

 前述のように、遺伝子の異常によって増殖シグナルが停止せずに増殖を続けるのが癌細胞ですが、癌細胞が数を増やしていく為には、莫大なエネルギーと細胞を構成する成分(蛋白質や脂質や核酸)が必要です。

 そのため、正常細胞と比較すると、癌細胞ではその数倍から数十倍のエネルギー産生と物質合成が行われています。これはつまり、癌細胞は「代謝」が亢進しているということです。

 「代謝(metabolism)」とは、生命の維持のために細胞が行う一連の化学反応で、「異化(catabolism)」と「同化(anabolism)」 の2つに大別されます。

 異化は、食物から取り入れた有機物質を分解することによって、エネルギーを得る反応で、具体的には「生体のエネルギー通貨」と言われる「アデノシン三リン酸(Adenosine Triphosphate:ATP)」を得る過程のことです。

 一方、同化はこの逆で、ATPのエネルギーを使って蛋白質や核酸や脂肪酸など、細胞の構成成分を合成する過程です。

 簡潔に言えば、代謝というのは「エネルギーの産生と消費の過程で、糖質・脂質・蛋白質がその形を変えること」ですが、癌細胞では、細胞を増やす為に代謝(異化と同化の両方)が非常に亢進しているのです。

 ブドウ糖を多く取り込んでATPの産生を増やして(異化の亢進)、そのATPとブドウ糖を使って核酸や脂質や蛋白質などの細胞構成成分の合成を増やす(同化の亢進)ことによって、癌細胞は、数を増やしていくのです。











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癌細胞とは何か Vol.002 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞とは何か Vol.002

 ◆ 癌細胞は増殖や細胞死の制御システムが壊れている

 約2万2千個ある遺伝子のうち、癌の発生に関与する「癌遺伝子」と言う遺伝子が知られています。

 そして、この癌遺伝子の本来の役割は、正常な細胞を増殖させることですが、異常(変異)を起こすと無制限に細胞を増殖させることに荷担してしまいます。

 それに対して、反乱分子の出現を監視して、細胞の癌化を防いでいる「癌抑制遺伝子」も見つかっています。

 癌抑制遺伝子は、老朽化した細胞の死(遺伝子で制御された生理的な細胞死:アポトーシス)を促し、細胞が増えすぎない様にコントロールする役割や、傷ついたDNAを修復させる役割を持った遺伝子です。

 この癌抑制遺伝子の働きが弱まると変異した細胞のDNA修復が妨げられたり、アポトーシスで除去されなくなったりします。

 これら、癌遺伝子、および、癌抑制遺伝子というのは、正常な細胞の増殖・分化・細胞死に関わる「遺伝子のDNA変異」の結果、機能異常をきたしたものです。

 そして、車に例えると、正常細胞の増殖に関して、癌遺伝子が「アクセル」の役割を、癌抑制遺伝子が「ブレーキ」の役割を果たしていると言えます。

 つまり、「癌遺伝子の活性化」は「アクセルを踏み続けている状態」であり、「癌抑制遺伝子の機能低下」は「ブレーキが故障した状態」だと言えます。

 一方、正常細胞は必要時に分裂し、必要がなくなると分裂を停止するという様に制御機構が正しく働いている訳ですが、癌細胞が、こうした制御ができないと言うのは、細胞増殖のアクセルもブレーキも故障しているためです。

 すなわち、癌細胞は、アクセルとブレーキが壊れて暴走している車のようなものなのです。(図2)

fig02











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癌細胞とは何か Vol.001 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

● 癌細胞とは何か Vol.001

 ◆ 癌細胞は遺伝子の異常で発生する

 私達の体は、約60兆個の細胞から成り立っていますが、それぞれの細胞の分裂や増殖は、遺伝子の働きによって厳密にコントロールされており、自分勝手に増殖することはありません。

 この様に、細胞の分裂・増殖の調節が正しく行われることで体の健康は保たれているのです。

 しかし、ある種の遺伝子の働きに異常が起きると、必要もないのに、勝手に増殖する細胞に変化する事があります。この異常な細胞によって作られた塊は「腫瘍」と呼ばれて、「良性腫瘍」と「悪性腫瘍」に区別されます。

 「良性腫瘍」は、増殖が遅く、局所的に細胞の塊を作るだけですが、「悪性腫瘍」は、周囲の正常な細胞や組織までも破壊してしまう性質を持ち、さらに血液やリンパ液に乗って離れた臓器に飛んで行き、そこで新たな腫瘍を形成します。これを「転移」と言います。

 「悪性腫瘍」は、無限に増殖し続け、ついには宿主である人間を死に至らしめる病気です。

 尚、医学的には、粘膜上皮細胞や肝臓細胞などの上皮系細胞から発生する悪性腫瘍を「癌」と呼び、筋肉・骨・軟骨・神経・線維芽細胞などの間質系細胞から発生する悪性腫瘍を「肉腫」と呼びますが、ここでは悪性腫瘍をまとめて「癌」と記載しています(図1)。

fig01

 癌は、遺伝子の異常(突然変異や発現異常)によって発生します。

 我々人間個々の遺伝子の情報は、細胞の核の中にある染色体のDNA(デオキシリボ核酸)に書き込まれています。

 DNAは、デオキシリボース(五炭糖)とリン酸と塩基(アデニン、グアニン、シトシン、チミン)から構成される、細長い糸のような構造をした核酸で、4種類の塩基の並び方によって、アミノ酸の並ぶ順序とどのような蛋白質ができるかが決まります。

 DNAの遺伝情報には、細胞を形作り機能させる為の蛋白質の作り方とその発現の量や時期を調節する為に必要なマニュアルが組み込まれています。

 したがって、この遺伝子情報に誤りが生じるとその細胞の働きに異常が生じます。

 例えば、正常な細胞であれば、止めどなく分裂増殖を繰り返すという事はありません。なぜなら、DNAの情報によって、分裂増殖のペースや限度がコントロールされているからです。

 しかし、この細胞増殖をコントロールしている遺伝子に異常が生じると細胞は際限なく分裂を繰り返す「癌細胞」となるのです。

 誤りを起こす原因は、DNAに傷がついて間違った塩基に変換したり遺伝子が途中で切れたりする為です。

 これをDNAの「変異」と呼び、DNA変異を引き起こす物質のことを「変異原物質」と呼びます。

 環境中には、たばこ・紫外線・ウイルス食品添加物等の変異原物質が充満しています。これらの変異原物質は、発がん物質と同じ意味だと捉えなければなりません。

 そしてまた、炎症で発生する活性酸素も、遺伝子に変異を引き起こすことによって癌の原因になるのです。











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ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!Vol.000 [癌を知る]


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 ~ ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する! ~

 はじめに

 この記事は、福田一典医師の著書『ブドウ糖を絶てば、がん細胞は死滅する!」の中から、癌患者が最も留意せねばならない「癌とブドウ糖の関係」に関する部分を抜粋し、私自身の闘病に対する指針とする。

 最近の統計によると、日本で1年間に新たに癌と診断される人数は、約70万人、癌で死亡する人数は、1年間で約35万人という統計値が報告されています。

 これは、癌と診断された人の約半数は、治っていないことを意味しています。

 近年の著しい医学の進歩にもかかわらず、癌の治癒率は、依然として5割を切っているのが現実なのです。

 では、福田一典医師の癌治療に関する基本を以下紹介して置きます。

 癌治療の基本は、癌を小さい時に見つけて外科手術で完全に切除することです。又、癌ができた部位や大きさによっては、外科手術に替えて放射線治療を行うのが有効な場合もあります。

 幸いにも、癌が早期に発見されて、まだ転移も起こっていない段階で手術や放射線治療を行えば、癌を根治することは可能です。

 しかし、かなり進行した状態で癌が見つかったり、または、治療後に再発した場合等は、現代の最新医学をもってしても、癌の根治は極めて困難です。

 この様に、標準治療が難しくなった場合、西洋医学では緩和治療しかない点に多くの癌患者さんが苦しんでいます。

 そして、症状の改善や延命の可能性を求めて、漢方治療のような伝統医療や民間療法やサプリメント等を使った「代替療法」を試される患者さんも多くいます。

 「代替療法」とは、西洋医学の通常療法(標準治療)に替わる治療法という意味で、この中には全くのインチキもありますが、科学的根拠や有効性を示すデータが存在することも事実なのです。

 そんな「科学的根拠のある代替療法」の1つとして近年注目を集めているのが、本書で紹介している「癌細胞のエネルギー産生の異常を利用した治療法」です。

 詳しい事は本書の中で解説していますが、簡潔にこの治療を行う根拠と方法を挙げると、以下の様になります。

  ● 癌細胞は、ブドウ糖(グルコース)に対する依存度が正常細胞
   に比べて何十倍も高い。
  ● よって、癌細胞がブドウ糖を利用できなくすれば、正常細胞に
   ダメージを与えず、癌細胞だけを死滅させることができる。
  ● その為に、食事中の糖分の摂取を減らして、
   「中鎖脂肪酸トリグリセリド(中鎖脂肪)」を多く摂取する
   『中鎖脂肪ケトン食(糖質制限食)』を実践する。

 癌細胞を攻撃する抗がん剤治療は、正常細胞もダメージを受けるので耐え難い副作用が問題になりますが、前述の治療法では、癌細胞だけを選択的に死滅させることが可能で、正常細胞にダメージを与えない為、副作用のない癌治療が行えるのです。

 本書の目的は、中鎖脂肪ケトン食が癌に効く根拠と、その方法を解説することですが、生化学の専門用語が多々出てくるので、難解に感じる部分もあるかもしれません。

 しかしながら、癌細胞のメカニズム、および、弱点を十分に知ることはとても重要であるため、やはり、詳細な解説の部分も読んでいただきたいと思います。

 癌に立ち向かう為には、分子レベルで癌細胞の特徴を理解するということも大切なのです。

 この本で紹介する治療法は、主に標準治療で効果がなくなった進行癌の患者さん達や、再発リスクの高い癌の治療後の患者さんに試してみてほしいと思っています。

 ただし、病状や治療の状況、あるいは服用している医薬品によっては実施できない場合もあります。

 その一例として、重度の糖尿病にかかっていたり、あるいは、肝障害や腎臓障害のある方には、この食事療法は推奨できません。

 又、中鎖脂肪ケトン食は糖質を制限する代わりに脂肪を多く摂取する食事なので胃腸障害などの副作用が生じる可能性が考えられます。

 以上のような理由から、中鎖脂肪ケトン食を実施するにあたっては、この治療法を十分に理解している医師の指導のもとで行う様にしてください。多くの癌患者さんが、この治療法で癌を克服されることを願ってやみません。

             銀座東京クリニック 院長 福田一典


                           〈 了 〉









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